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ひんやりとした洞窟の中、その最奥。
一際巨大な空間に出たかと思うと、そこは水場にいるような湿気で満ちていた。
「姉様、本当にいいの?」
濃い琥珀色の髪と、同色の瞳をした十二・三歳くらいの少女が、悲しげに言った。
淡い緑色の衣装を身に纏う少女の瞳は、揺れている。
問いを投げかけられた少女の姉は、ふわりと笑って少女の頭を慰めるように優しく撫でる。
「大丈夫だよ、心配いらない。だからそんな顔するな」
ふわりと微笑み、少女の姉はそう言った。少女は、悲しそうに首を振る。
「姉様、答えになってない。本当に、いいの?」
否定してほしいかのように必死に、少女は言いつのる。
「いいも何も、仕方ないだろう? 本当に大丈夫だから。だからクレディア、頼む」
幼子を諭すようではなく、対等な目線で頼んでくる姉に、少女はもう何も言えずにただ唇を噛みしめた。
「──はい、姉様」
少女はそっと、洞窟の最奥の空間、その更に一番奥に立つ姉に向かって手をかざした。
「封印の、眠りを」
少女がそう呟くと同時に、空気が一気に冷えていく。
風もないのに、二人の衣装の裾や袖、帯紐が揺れる。
空気の冷えていくのを感じ取った少女の姉は、ふっと微笑んで目を閉じた。
空気がきしんで、ぴきりという音が広い空間に響く。
一瞬、雪山の中のように冷えたかと思うと、次の瞬間には最初の状態、気温に戻っていた。
少女はそっと、かざしていた手を下ろした。
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