第三章「叫び声」

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「待ってよ。足元ふらついてる。」   女は優雅の後をついてきた。   「手貸そうか?」   優雅はお構いなしで自分の病室へと歩いていた。   「なんで無視!?」   さすがに病室までついてこられるのは困る。   「ついてくんな。」   女を見ず、冷たく言い放った。   「じゃあ名前教えて。」   女の言葉に優雅は眉間に皺を寄せた。   「…お前に教える必要がない。」   「じゃああんたの病室まで行って名前みる。」   優雅は呆れて立ち止まった。 そして女の胸倉を掴み、   「名前が知りたきゃ高橋に聞けッ!!あいつが俺の「飼い主」だ。」   女は呆然と立ち尽くした。   「飼い主・・・?」   「あぁ。俺の「飼い主」だ。俺はあいつの「狗」なんでね。」   優雅は口元だけ微笑み、早々とエレベーターに乗り込んだ。   名前なんてない。   俺は「狗」だから・・・。
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