第四章「君の手」

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今日は生憎の雨。   雨のせいで少し肌寒い天気となった。   病室に響く雨の音。   憂鬱な空。   だけど優雅は雨が好きだった。   雨の日の朝は、けだるい身体を無理矢理奮い立たせて外に出た。   そして、空を見上げた。   雨は好きだ。   汚れた空気が新しい空気に生まれ変わる。   汚れた人間は外からいなくなる。   そして、自分の「汚れ」を落としてくれるような気がするから。   雨が好きだ。   そのまま自分も溶けて消えてしまえばいいと思ったから。   コンコンッ・・・―   静かな病室に優雅の一番嫌いな音が響いた。
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