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「やぁ。」
訪れたのは。
あの時の女だった。
「今日は雨降っちゃったね。これじゃあ中庭行けないねぇ。」
女は笑顔で優雅に近づいた。
「…勝手に入ってくんな。」
優雅は視線をどんよりとした空に移した。
「えっと…名前…優雅って言うんでしょ??」
女は遠慮がちに優雅に訊ねた。
「飼い主様が言うならな」
優雅は皮肉っぽく女に言った。
「優雅はあいつが好きなの???」
無邪気に訊ねてくる女が腹立たしかった。
「俺は好きじゃない奴とでも寝れる。だって俺は…。」
「「狗だからな。」」
女と言葉が被った。
女はニカッと笑い優雅の顔に自分の顔を近づけた。
「一回言われれば覚えられるよ。でも犬って自分の意志で鎖に繋がってるんだから嫌なら噛みちぎって逃げちゃえ。」
優雅は驚いた。
そんな事、初めて言われたから。
「…なんだお前…。」
眩しい程の笑顔を見せる女と初めて目を合わした。
「お前じゃなく、葵ね。あ・お・い。あとやっと目合わしてくれたぁ。」
優雅は葵の顔を見て笑った。
「お前どうでもいいけど不細工な面してんなよ。」
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