第四章「君の手」

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静かさが戻った病室は、なんだかさっきよりも静かになったように感じた。   今までに関わった事がないタイプだった。   何事にも積極的で、   自分の思ったままに感情を示して、   笑顔に偽りがなくて、   何より目に輝きがあって・・・。   優雅はあまり葵に近づきたくなかった。   きっとこのままあいつが近くにいると、自分が「汚れている」事を忘れて、勘違いしてしまう。   扉の開く音が聞こえた。   「優雅…会いたかった。君と一秒だって離れたくないよ…。」   「・・・アイシテル。」   高橋がうっとりとしながら優雅の元へと近づいた。       俺は、「狗」だ。   勘違いする所だった。   首についている鎖を噛みちぎる所だった。   そして俺は・・・          汚れていたんだ。     優雅は、ゆっくりと高橋の首に腕を回し、汚れたシーツに身体を委ねた。
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