第五章「意味」

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桜がぽつぽつと咲き始めた。   今年は例年より少し遅い桜の開花だったらしい。   中庭の桜もほんのりピンクが多くなってきた。   もう少ししたら優雅の誕生日。   生まれてしまった日。   優雅は、誕生日が嫌いだった。   どうして生まれた事を喜ばなきゃならないんだろう。   喜ぶのは、汚れた欲望の塊だけ。   だけど、誕生日もこれで最後だ。   誕生日の日に、自分を責めなくてもよくなるんだ。   「…ぃ…。…ぉ……ぃ。………おいッ!!!」   優雅はパッと前を見た。   「やっと気づいたぁ。優雅、今どっか逝っちゃったでしょ???」   あれから、葵は毎日優雅の病室を訪ねていた。   葵の手にはまだ咲きかけの桜の枝が握りしめられていた。   「ほれッ!優雅桜好きでしょ??いつも桜見てるから、枝持って来ちゃった。」   葵はニカッと笑っていた。   「……怒られるぞ…。」   優雅は呆れて呟いた。   「…だって優雅が桜ばっかみてあたしの事見てくれないんだもん。」   頬をプクッと膨らませた。   「お前の顔を見るぐらいなら、俺は寝る。」   そう言うと優雅はベッドを倒した。
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