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桜がぽつぽつと咲き始めた。
今年は例年より少し遅い桜の開花だったらしい。
中庭の桜もほんのりピンクが多くなってきた。
もう少ししたら優雅の誕生日。
生まれてしまった日。
優雅は、誕生日が嫌いだった。
どうして生まれた事を喜ばなきゃならないんだろう。
喜ぶのは、汚れた欲望の塊だけ。
だけど、誕生日もこれで最後だ。
誕生日の日に、自分を責めなくてもよくなるんだ。
「…ぃ…。…ぉ……ぃ。………おいッ!!!」
優雅はパッと前を見た。
「やっと気づいたぁ。優雅、今どっか逝っちゃったでしょ???」
あれから、葵は毎日優雅の病室を訪ねていた。
葵の手にはまだ咲きかけの桜の枝が握りしめられていた。
「ほれッ!優雅桜好きでしょ??いつも桜見てるから、枝持って来ちゃった。」
葵はニカッと笑っていた。
「……怒られるぞ…。」
優雅は呆れて呟いた。
「…だって優雅が桜ばっかみてあたしの事見てくれないんだもん。」
頬をプクッと膨らませた。
「お前の顔を見るぐらいなら、俺は寝る。」
そう言うと優雅はベッドを倒した。
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