第六章「鎖」

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今日もまた、雨。   季節は初夏。   きっとこの雨が明けた頃には暑い夏が待っているんだろう。   あれから二ヶ月が過ぎた。   真っ暗な部屋に、響く雨音。   このまま目を閉じれば、きっとそのまま深い眠りにつけるだろう。             手首が痛い。         優雅はあの時、病院を抜け出して自分の「狗小屋」へと帰った。   「狗小屋」に集まる人々は優雅の帰りに悦んだ。   そしてこの二ヶ月間、様々な「飼い主」の所で転々と暮らしていた。   そして、二週間前のとある日、優雅は捕まった。   優雅は重く、だるい身体を起こして、部屋に一つしかない窓に手を伸ばした。           ―ジャラリ………。           音のない部屋に、無機的で冷たい音が響いた。   優雅の細い手首には、重くて冷たい                           「鎖」                       がついていた。
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