第七章「涙」

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「…ぃ…ちゃ…。…おい…ゃん。…葵ちゃん。」   葵は目を覚ました。   「やっぱりここに居た。探したわよ。」   看護婦さんが微笑みながら葵の頬を伝う涙を拭いた。   葵はいつの間にか眠ってしまっていた。   「…あ…。ごめんなさい」   葵はまだ眠気の残る身体を起こした。   「いいのよ。…優雅君…元気だといいわね。」   看護婦さんは少し淋しそうに呟いた。   優雅がいなくなった事がわかったのは、「あの日」から一週間経った頃だった。   勇気を振り絞り、優雅の病室の扉を開いた。   しかし、そこには優雅の姿がなかった。         葵は呆然と立ち尽くした。         優雅がいない。         葵は気が遠くなりそうだった。            もしかしたら…。         葵はそこで考える事をやめた。     そして、高橋の元へと走り出した。              「脱走。」         その言葉を聞いて葵は心底安心した。   だが、葵は胸が痛くなった。   優雅はきっと自分のせいで、深く傷ついた。   そして優雅をさらに苦しめた。         だけどあの時、確かに聞こえた。
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