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「ただいま~」未希は勢いよく玄関のドアを引き開け入って行った…
靴は脱ぎっぱなし、バックは廊下にほうり投げ これ又勢いよく居間のドアを開けて見たが、いつもの様にそこは虚しく母も父も不在のうす汚れた空間が静まり返るばかりで有った…
ここわ東京の下町、川を越えると千葉になる猥雑なゴミゴミとした住宅街のど真ん中 今は夕方4時なのだ、私は 明日から勤める鞄屋の社長と話しをして 今日くらい真っ直ぐ家に帰ろうと思い帰って来たが案の定、家には誰もいないのだった…
私は半月くらい前にこの下町から電車で5~6駅先の私立女子高をどうにか卒業したばかりで 在学中は毎日の様に 上野や池袋で遊び回り 殆ど退学寸前の繰り返しで お情けで卒業出来た様な状態なので結局就職も決まらず 落ち込んでいた…
いつもは父や私や家事に何の関心も示さない母が 無理矢理 私を引っ張って行ったのが 今日の鞄屋なのだ…
私は面接用の似合わない紺色のスーツ姿を鏡に見つけ一人で吹き出し 誰もいない事を幸い 思いっきり悪態をついた
「おぃっ 美智子 お前 旦那や娘をほったらかして 何をやってんだっ!!」
男言葉でほえ立て いくらかすっきりとした
未希はニヤニヤ笑い続けた…
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