119人が本棚に入れています
本棚に追加
「あ、あの‥よかったらどうぞ。」
僕は彼女を手招きして自分の席を譲った。
「ありがとう。」
これが彼女との出会い。
それからしばらくはバスが一緒になった。
いつも四つ先の停留所から乗る彼女に席を譲った。
席を譲るから一緒に座るまでにそう時間はかからなかった。
朝からバスの二人席に陣取るのが僕の日課になった。
彼女より先に乗ってくるひとに睨まれても気にならない。
彼女と座れるこの時間が何よりも嬉しい時間だったから。
この状態が二ヵ月も過ぎると乗客にも二人が座る光景は当たり前のものとなった。
学制服を着た僕とお腹の大きな彼女。
とても奇妙な組み合わせだが二人が周りからも認められていた唯一の時間だったかもしれない。
最初のコメントを投稿しよう!