風の行方、花の行方

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「――巫女…?」 そこに居たのは巫女装束を纏った銀髪の女性。 片手には鈴を持っている。 その女性が纏う光は、邪を寄せ付けないほどの神聖な光。 「――摩多羅神…」 「――そなたの願い聞いたぞ。そこの者ぞ、知りたくば訪ね来てみよ」 巫女が指差す先にあるのは見覚えのある社。 彼が振り返った時、その巫女の姿はもうなかった。 あの社へ行け、というのか。 しかし、それではこの源義経の命が――。 「行け――」 短く、重い一言。 そして、それは今、自分が選べる唯一の道。 彼は太刀を持つと、ゆっくりと立ち上がる。 まだ決めたわけではない。 が、今はそれを選ぶ。 彼は社の方へ向かう。 その背を、息も絶え絶えな源義経が見つめる。 ――彼が、私の転生者ならば…彼はあの太刀を、扱えるであろう。 声に成らない言葉を紡ぎながら源義経はその双眸をゆっくりと閉じた。 心地よい風が髪を揺らす。 自分が目指したもの、それは何だったのか――。 兄への憎悪――いや、兄への忠誠――いや、兄への羨望、そして、思慕――。 ――そうだった…兄弟というものに触れたかった…。ただ一度、見た…あの笑顔を…。 .
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