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夜。夜だと言うのにギラギラとネオンが輝いており、暗さをまったく感じさせない。遠くの海さえも明るいほどだ。
眠らない町、ザナルカンド。
船を模したよな建造物のデッキ部分に、何人もの人間がいる。
一人の少年の登場に一気にその場が沸き、人が一点に集まった。
「サインして、サイン!」
「はぁいよ!」
そう返事を返したのはティーダと言う少年だった。
「ちょーだい!」
「いいっスよ」
「僕にも!」
「あせんなって」
この地には、ブリッツと呼ばれる、知らない人は誰もいない国民的スポーツがある。スフィアプールと呼ばれる特殊な球状型の巨大なプールの中に水をいっぱい入れて、その中で選手同士ボールを取り合い、ゴールにシュートを決めるというなんともエキサイティングなスポーツだ。そして彼、ティーダは、このブリッツの選手だった。ザナルカンド・エイブスという人気チームの選手で、若干17歳にしてエースの座を手にした期待のホープ。人々が集まるのも、サインをねだるのも、当然ともいえる人物なのだ。
「サイン、お願いしていいですか?」
「もちろん!」女性の要望にも快く答える。
「試合、頑張ってね!」
「まかせとけって」
すらすらとブリッツボールにペンを走らせるティーダ。
「じゃあさ、今夜シュート決めたら…あ~…こうすっから!それ、二人へのメッセージっつーことで!」
キャー!と、サインを受け取った女性二人から歓声があがる。
「席どこ?」
「東ブロックです。最前列!」
「あたし、右から5番目ね。」
二人に席を聞き、「了解ッス!」と小気味よく返事を返した。
「じゃ俺、そろそろ行くから!みんな、応援よろしくなっ!」
その場に居た人たちに軽く手を振る。すると先ほどサインをねだってきた少年達が行く先に立ち塞がり…
「せーのっ」
「「「ブリッツボールおしえて!!」」」
「これから試合だってー。」
少々困った顔で言うティーダ。
「じゃ、おわってから!」
少年の一人が、目をキラキラと輝かせながら言う。
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