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、と思ったのも束の間、フリーウェイも光線の影響で崩れて行く。
うわぁー!という叫び声だけを残して、ティーダは崩れた町へと吸い込まれていった。
「ってー…」
頭を抱えてそろそろと立ち上がるティーダ。あちこち痛みはあるものの、どうにか無事だったらしい。落ちたそこは、スタジアムの入り口付近だった。パニックに陥った群衆をかきわけ、崩壊したスタジアムをやっとの思いで抜ける。
「アーロン!!」
少し行ったところで、見知った人物を発見した。右目にキズを負い、サングラスをかけ真っ赤な服を羽織った男。アーロンだった。ここ10年―父親であるジェクトが失踪して以降、ティーダを後見してきた人物である。
「なにボサッとしてんだよ!」
「お前を待っていた」
「またワケわかんないことを…」
言い返すが、アーロンは出口の方へと歩みを進めた。
話を聞くつもりはないらしい。ティーダも後を追い、フリーウェイへと出た。
「!」
異変を感じ振り向くと、背後には先ほど会った青色のフードを目深に被った少年が立っていた。
「なんなんだよ…」
うんざり、というように少年に近づく。
すると周りの異変に気付いた。
さっきまで非難のために走っていた人々が、ぴたりと止まっているのだ。走っている時の格好のまま、まるで時間を止めたかの如く。
驚き、回りを見回していると、少年は言った。
「はじまるよ」
「…はぁ?」
顔だけを少年に向ける形で、ティーダは返した。
「泣かないで」
問いただす為に、つかつかと謎の少年に歩み寄る。
何気なく後ろを振り返ってみる。すると、再び人々が動き始めたのだ。
反射的に少年の方へ向き直す。
‐少年は姿を消していたのだった。あたりをいくら見回してもそれらしき人物は見当たらない。
「……なんだ?」
もう一度辺りをよく見回して
「ま、待てよ!」
謎の少年が向かったであろう方向へと駆け出した。
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