第二話・―閉ざされた記憶―

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 後に残された隆は小さくため息を吐くと、周囲の様子を慎重に確認しながらしゃがみ込む。  そして、子供が現われた時から感じている殺気が気のせいでない事を認識すると、確かめるように問う。 「何か、俺に用なのか……?」  しかし、子供は虚ろな表情で何も言おうとはしない。瞳に溜めていた大粒の涙も今は無く、一点だけを見詰めている。  不審に思った隆が立ち上がろうとした瞬間、背中に鋭いものを当てられた。 「何か、用か?」  相手の目的が分からない以上、子供すら敵とみなす訳にもいかず。  隆はいつでも子供を庇えるように気を配りながら、冷静に用件を促す。
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