第二話・―閉ざされた記憶―

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 隆はそれ以上深追いする事もせず、鮮血の流れる右手を庇いながら子供を見る。  子供はいつのまにか隆の側まできていて、怯えた表情になりながらも、服の裾を掴んでいた。 「……迷子じゃあ、無いか。なら、仕方無いな」  隆は先刻までの厳しい表情を消し去ると、それ以上子供を恐がらせないよう、抱き上げてやりながら優しい声音で言う。 「家に、くるか? 先刻のお姉さんもいるぞ」  子供は嬉しそうに、無言で頷いていた。
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