第二章・―記憶―

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 家に戻った隆は、玄関に上がるなりため息を吐く。  成り行き上仕方無く、子供を連れ帰ってしまったが。  もしこの子に両親が存在するのであれば、これは立派な誘拐である。  どうも最近、面倒に巻き込まれる事が多いと思うが。  それでもこうして律儀に拒否せずにいる自分に、自嘲気味に小さく笑う。  楓と共に暮らす前の自分なら、放置していたであろう。  正直、この子供を置いて行こうという思考がよぎった時。  しかし一瞬、楓の悲しむ顔が脳裏に浮かんだのも事実だった。  確実に、自分は楓に影響されている。  隆はそこまで考えたところで、リビングの方へと足を向けると、中へと入って行った。
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