第二章・―記憶―

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 リビングで楓がソファに座りながら、ため息を吐いている。  何かを深く考え込んでいるのか、静かに入ってきた隆の存在には気付いていないようだ。  束の間迷ったが、声をかけずにいるのもおかしいと思い直す。 「……楓」  それで振り向いた楓は、隆の姿に驚いた表情を見せる。  子供は置き去りにして帰ってくるもの、と信じ込んでいたのだろう、表情から楓の考えがありありと見え。  隆はまだまだ信用されていないのかと、少々苦い顔をする。 「隆、その子。連れて帰ってきちゃったの?」  先刻隆の行動に、怒りを覚えて帰ってしまった楓だが、それが些細な事のようにそう呟く。  子供は楓を見て笑った。
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