第二話・―閉ざされた記憶―

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 慣れない乗り物に乗らされ、散々付き合わされてぐったりしている隆とは対照的に。楓はまだ乗り足りないのか、朝よりも一層はしゃいでいる様子で元気に言う。 「お腹空いたね、隆」  いつもならば眩しく見えるその笑顔も、今の隆にとっては邪悪な笑みにしか見えなくなっている。  特殊な力のせいで他人から良い扱いを受けず、化け物扱いされてきた隆は半ば人間不信に陥っている節があるのだ。  そんな隆に、人込みの中に同化しろという行為はほとんど拷問でもある。  隆にとっては、楓と普通に接していられる、それ自体が奇跡に近い。  だが、そこで何も知らない楓に文句を言う訳にもいかず。隆は黙って頷くと、気付かれないようため息を吐きながら言った。
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