第二話・―閉ざされた記憶―

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「何処にあるんだ? 食事をするところは」 「うん、何処かなぁ」  その問いに、楓は持っていた園内の地図を開きながら答える。  そうしてしばらく沈黙していたが、やがて視線を背後に向けたかと思うと止まってしまう。  それに気付いた隆も、同じ方に視線を向ける。 「どうした」  それから楓と同じように、止まってしまった。 「……パパぁ」  そこには楓の上着の裾を掴み、涙目で立っている子供がいたからだ。  グレーの半ズボンに、チェックのシャツを着ている子供が、明らかに隆の方を見ながらそう呟く。  それで楓が隆の方を向いた。 「……何?」  視線の意味が分からずに聞き返す隆に、楓は疑うような眼差しを向ける。
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