第二話・―閉ざされた記憶―

9/16
前へ
/160ページ
次へ
「この子、隆の事パパって言ってるよ」 「楓、本気で言ってるか?」  あり得ない選択肢に、呆れた様子の隆が突っ込みを入れると、楓は途端に機嫌を悪くする。 「だったら、どうして隆の事パパって言うの?」 「知らないよ、そんな事は。第一、あり得ないだろう。俺に子供なんて……」  今まで他人と接触するのは最小限に抑え、楓と出会ってからでさえ、そんな接触の無かった隆に子供がいる筈は無い。  言外にそう示すと、楓は再び子供を見ながら言う。 「じゃあ、迷子かぁ」  それを聞いた隆は、それが一番最初に選択されるべき項目だろうと、更に呆れるが。  続く楓の意外な言葉に、その文句はかき消されてしまった。
/160ページ

最初のコメントを投稿しよう!

410人が本棚に入れています
本棚に追加