序文

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  相手から、約束の時間に約束の場所に来てない藤原のことを聞いた俺は、慌てて藤原に電話をかけた。   藤原は悪びれず、俺からの電話に出た。   「兄貴!どうしたんだ?間に入った俺の顔が丸潰れじゃないか」 そう言う俺に藤原は「金が出来なかったんだから仕方ない」と言った。   俺は急遽、最初の50万を立て替えることにした。   「兄貴、今貸す50万はいつでもいい。来月は大丈夫ですか?」   「来月こそは大丈夫だ」 藤原はそう答えた。   K組の交渉担当者のDは、約束が守られなかった事を突いてきた。50万じゃ足りないと言うのだ。   Dの言い分は、   「こっちはヤクザの筋を曲げて譲歩した。それを何の連絡も入れず第1回目からこうなるとは、ウチを馬鹿にしてるとしか思えない。この始末をどう付けるんですか?」   と言うものだった。   俺はすかさず反論した。   「ヤクザの筋の話しをするなら、私にその話しをするのが筋違いでは?   私は藤原との話しの間に入りましたが、藤原のケツを拭くとは言ってない。   藤原の代わりに金を持参しましたが、その私に対して始末云々を言うなら、別の話しになりますよ。」   Dは「別の話しとは?商人さん、随分と高飛車なモノの言い方ですが、因縁つける気ですか?」と言い放ってきた。   俺は言った。 「因縁?因縁どころか善意ですよ。 藤原が金を用意出来なかったので私が藤原に貸すことにしました。これを世間では善意と言うのを知ってますか?   その私にどういう始末を求める気ですか?払えない藤原から金を集金する術が他にあるんですか?あるならどうぞ。約束守らない藤原が悪い話しです。    約束を守らない藤原に金を貸す。藤原はその金を払う。藤原にそれでは済まないぞというならイザ知らず、善意で立て替える私に対してアヤつけるならこのまま帰ります。   善意でモノ言ってる私に始末を求めるってのは、それこそ筋違いってもんでしょ」   Dは渋々承知した。この日を境にDは交渉担当を外されることになるが、Dは金をK組に持ち帰った後、事の一部始終をK組に報告した。   程なくDから電話が来た。K組の副長が俺に会いたがってると言うのだ。  
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