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不義理
K組の副長はDから俺の話しを聞き、
「その商人という男、最近の若い奴にしては珍しいやつだ。
ましてK組と聞けば皆逃げるか、知らんぷりするかなのに、不義理するような兄貴分のために良くそこまでするな。本来なら商人という男には関係ない話しだろ。
是非、一度会ってみたい。席を作れ。」
と言われたらしい。
俺は悪びれず、K組が用意した席にひとりで出向いた。
Z市の某ラウンジに、出迎えのDに案内され中に入った。
貸し切りの店内は俺以外のすべての人間がK組の組員達だった。
俺と同郷の副長は、俺の悪びれない態度、K組の中にひとりでいても堂々とモノを言う俺を気に入ったと言ってくれた。
副長は更に言った。
「藤原さんに言ってくれ。無理しないでくれ、相談なら乗るから」と。
俺はその件を翌日藤原に伝えた。
そして翌月の期日が来た。
ここで藤原はまた同じことをした。K組の交渉担当者はDからFに変わっていたが、Fは頭を抱えた。
Fは上から、藤原がまた同じことをしたなら詰めてしまえと言われていたからだ。無理なら相談に乗るとまで言ってくれた相手の顔も、間に入った俺の顔も再び潰れた。
困った事に、その日俺は東京のオジキ分の所に所用で行ってた。
Fは電話口で俺に言った。
「自分は商人さんがどんな人なのか知ってる。それだけに争いは避けたい。今回は自分が立て替えるので、商人さんが東京から戻ったら藤原さんから回収して下さい。金利も何もいりません。商人さんを信じます」
こともあろうか、敵方であるはずのK組の人間が藤原に救いの手を差し延べてくれたのだ。
東京から帰った俺は、藤原の所に怒鳴りこんだ。
藤原は「いいんだ。こっちは武田が死んでるんだ。居直ってやる。来るなら来ればいいんだ」と開き直った。
俺は激怒した。
「兄貴!いい加減にしろよ!武田が死んだのは相手のせいか?兄貴はテメェで武田のケツ拭くって話ししたんだろよ。相手の顔潰して、俺の顔潰して、それで何トチ狂ってんだ?ふざけんな!」
俺は再び支払いの金を立て替えた。
そして藤原に「兄貴、次はないよ。俺じゃなく、相手がね。もう次はないだろ。」と言った。
藤原からの返事はなかった。
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