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藤原は、どこか自暴自棄になってたのかも知れない。
自ら言っていたシノギもろくに手がけけず、それでいて俺には「シノギで関東のオジキから大金が入るから大丈夫だ」と言いきった。
翌月の期日のその日、藤原からの電話で「予定が長引く。入金は月末になる。今日金は出来ない」と聞いた。
期日の当日。約束の時間まで後4時間に迫っていた。
兄貴は言った「S龍会の二代目に電話してほしい。金を借りたい」
俺はS会長に電話を入れた。しかしこの時期、実はS会長自身も火の車だった。
S会長は「そいつは沢村の若い衆だろ。そんな話し俺に聞かせるなよ。知らねぇよ。俺も大変なんだよ!沢村に言えよ!
それより商人、お前何だ?普段、電話のひとつもかけて来ないで、元○○会の本部長までやった男がどこで落ちぶれたか、藤原と一緒になって俺から金を引っ張る気なのか?
お前が俺から盃もらってるなら考えるけどな、お前は長澤だろ!沢村が言ってきたぞ」と言った。
やっぱり、俺は長澤組扱いされていたのか…。また沢村か。
俺は経緯を説明しなかった。いや、説明する気も起きなかった。それ以上に火の車だと聞いていた。説明したところで何も解決しない。
「わかりました。じゃあY組長か、K会長の電話番号を教えて下さい。事情を説明しますから。」
同門の直参の名前を出してそう言う俺にS会長は怒鳴り散らした。
「何言ってんだテメェ!長澤に、沢村に言え!俺は長澤達にそんな教えはしてねぇぞ!」
もうダメだと思った。元よりS会長は今回の事件を何も知らない。仕方なかった。それでもカッとなった俺は言った。
「わかりました。S会長には二度と電話しません」そう言うと、俺は一方的に電話を切った。
藤原にS会長とのやり取りを説明した。藤原は「俺が死ねば解決するか?」と俺に聞いてきた。
俺は怒鳴った。
「兄貴!ふざけんな!武田が死んで何も解らないのか!中途半端に死んで何が残った!?
残ったのは、周りに与えた深い悲しみと、後片付けという迷惑だけだ!
俺の女も…」ここで言葉が詰まった。
「兄貴、約束してくれ。もう二度とそれは無しだって。逃げても何も始まらない。逃げたら終わりだ」
兄貴は小さく頷いた
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