兄貴分の自殺

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兄貴分の自殺

  力無くうなずく藤原に対して、「兄貴、俺にまかせろ。残り幾らか足りないかもしれないが、俺が貸してやる。もうカタをつけよう」と言った。   俺には生活があった。 別のシノギに現金も投入していた。買い物依存症でもあった女の残した借金も一括して支払っていた。   俺は、新たなシノギにあてるために金主から得たシノギの金、それと、家にあった大型ハイビジョンテレビから最新型のパソコン、家電屋の倒産で押さえたいくつかの最新の電化製品まで売りとばし、果ては死んだ女からプレゼントされたデュポンのプレミアムライターまで売り飛ばした。   それらの金を一円も使わずに藤原に全て渡した。   これらを払えば数百万ある残金は残り数十万になる。   「兄貴、今回これだけ払えば残り数十万だ。来月の期日まで、後は兄貴がなんとかしてくれ。俺はもうバンザイだ」   兄貴は「月末に金が入るから大丈夫だ」と言っていた。   俺は沢村に事のいきさつを話したが、沢村も他の長澤組の面々も、金を一円たりとも出さなかった。   噂を漏れ聞いた、旧四代目○○会の連中が、1万、2万と持ち寄ってくれた。   俺の配下は、自分達も苦しい中皆で金を持ち寄ってくれた。  それだけじゃない。絶縁になった代行の高橋までが藤原に金を持ってきた。   俺と反目(ハンメ=対立)だった旧組織の先輩連中も手持ちを僅かだけどと持ち寄ってきた。   俺は涙が出た。   長澤組も沢村も藤原を見捨てたその中で、旧組織の連中だけは僅かでも力を貸してくれた。   残金は30万を切った。   たとえ、兄貴に月末の入金がなくても何とかなる。   安心して気が緩んだせいか、精神的疲労で俺は倒れた。   女の闘病と世話、数々の掛け合い、武田の自殺、兄貴の自殺未遂、女の自殺、シノギの頓挫、金策、これらを同時期にこなしてた。   精神は限界を遥かに越えてた。肉体が先に壊れた。   夜中に吐き気、発汗、めまい、動悸に襲われた俺は救急車で病院に運ばれた。   そして運命の期日が来る。   期日の前日、俺は退院した。   俺は藤原に明日の期日は大丈夫か聞いた。   藤原は「大丈夫だ」と胸を張って言った。   当日の夜、俺の携帯にK組から電話が入った。  
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