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翌日、Z市の代紋違いの組織の組長からの伝言が来た。
「商人さん、今回の話しの間に入るのでウチの組織に来てもらいたい」
昨日の菱系組織からも、コンタクトが再び来た。
それ以外にもZ市の各組織から誘いが来た。
有り難い話しばかりだった。
皮肉にも、長澤組以外のZ市の組織が俺個人に協力姿勢を見せてくれたのだ。
その中のひとりが俺に言った。
「商人さん。ヤクザはヤクザを知る。遠慮は無しだ。」
俺は、それぞれ泣きそうになるのを堪え、いずれも丁重に断った。
甘えれば借りが出来る。借りが出来れば、その為にその組織に加入しなければならない。
告別式が終わり、藤原もまた灰になった。
これで葬儀は終わった。
いよいよ抗争が始まる。S龍会は飛んだ。長澤組もそれに伴い崩壊した。藤原も死んだ。俺はたったひとりだ。
前代未聞の個人対組織の闘いだ。
俺は腹をくくってK組に電話を入れた。
副組長は俺に言った
「商人、うちのボスに全て話した。ボスは商人のことを偉く気に入ったと言ってた。
組織に頼らず、たった一人で戦おうとした男を潰すのは勿体ないと言っていた。
もういい。全て終わりにしよう。しかし、よくやったよ。ウチの組に是非欲しかった」
あっけなかった。
全てが終わった。
電話を切ったあと、涙が溢れ出た。
真っ先に死んだ女の顔が浮かんだ。
武田と藤原が死んだ実感が初めて湧いてきた。
ピンと張り詰めた感情の糸が緩んだ。
K組のYからも電話が来た。
「商人さん。よく頑張りましたね。ウチは待機解きましたから、そちらも解いて下さい」
俺は配下を解散させて、O兄貴に礼と報告の電話をかけた。
奇(く)しくも、藤原の葬儀の日に全てが終わった。
その話しを聞いた沢村から連絡が来た。
沢村は俺に言った。
「組が無くなったし、藤原も死んだ。商人、俺の若い衆になれ。俺が藤原から貰い受ける」
あまりの勝手さに俺の心は煮えたぎったが、押さえて静かに口を開いた。
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