黒い『郵便ポスト』

25/55
671人が本棚に入れています
本棚に追加
/444ページ
その日、さえは参考書を買った帰りにせのうにバッタリ会った。 「あ」「あ」 二人の互いに気付いた声が重なる。 「本屋さんに行ってたんですか?」 せのうのソプラノの声が、微笑んだ口元から出てきた。 さえは、参考書買いにちょっとね、と言いながらせのうの横に並ぶ。 「今日も暑いわね…」 さえは顎から垂れる汗をハンドタオルで拭いながら、ギラギラに光る太陽を細目で見て訊ねた。 「暑いのでしたら…アイス買ったんですけど食べます?」 腕にぶら下げていた白い袋から、抹茶アイスとバニラのカップアイスを取り出す。
/444ページ

最初のコメントを投稿しよう!