1.犬になったタダシ

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「…タダシ。忠犬の忠の字で、タダシ、だぞ!」 「あうぅ…?」 「タ・ダ・シ!わかったかぁ?タダシ」 「あん!あ…ううぅ、うぅ…」 「?」 タダシの様子がおかしい 少し苦しそうな顔を床に押し付け、前足をカリカリとたてる 「ど、どした…」 「う、うあああぁ…」 「!?」 タダシの皮膚がビリと伸びて手に足になり、高い鼻はスッと引っ込み頭からは金の髪が生える みるみる内に、タダシは人になった いや、人と犬の中間ぐらいだが… とにかく、人になったタダシに俺は驚きを隠せなかった 「な…え…、忠…!?」 「…………モツ、久しぶり、…とでも言うべきか?」 「な…で……」 それは、数ヵ月前に死んだはずの友 涙が出て視界がボヤける 「泣くな」 「な、で…忠…」 「簡単に話せば、俺が犬に乗り移った。そんで、お前が俺に俺の名前をつけたら…こうなった」 「なにそれ…。あはは…」 ぶっきらぼうなしゃべり方、無愛想な顔、姿かたち、全て忠そのもの 嬉しさで脱力して笑う 「忠…忠…、……おかえり…」 「お、おぅ…」 ぎゅっと忠を抱き締めた それは小さな命 実感するように強く、強く… 「あのな、いろいろ話したいんだ、いいか?」 「うん…」
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