第一章‐学園の違和感

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入学式が終わり、今日は新入生の初授業の日。   「んぁ……いーい風だなぁ~」   「なに言ってんのよ。早く行かないと初日から遅刻よ!?」   風車と綾女は通学路を走っている。   「綾ちゃん!ちょっと待ってーっ!」   風車は典型的な運痴(運動音痴)。マラソン大会は毎年ビリ。運動会は風車のいる組は必ず負けると言われるようになったほどである。   「かざぐるま、あんたアレ使ったら?」   風車には、悩みがある。 その悩みは大きく分けて二つだ。   一つ目は、風車という名前がゆえに[ふうしゃ]ではなく[かざぐるま]と呼ばれる割合が多いこと。 二つ目は、自分に人にはない力があるということ。   「アレは、ダメなんだよ」   「ふぅん……こだわるわねアンタ」   風車は今はその力は使わないという。   「とっ、とにかく急ごう?」   風車は慌てて学園へ向かう。   「チャイム鳴ってるわよ、かざぐるま!」   「この廊下から教室までの距離が……」   すると彼はいきなり計算を始める。 どうやら風車は根っからの理数系らしい。   「計算なんかいいから急ぐわよ!」   二人は教室に走っていった。   『おはよーっ!』   元気よく挨拶する二人だが、  「……」   生徒達は完全無視。   「あれ?」   綾女は違和感を感じた。   「みんなー? 何してんの?」   「……勉強?」   口を開いたのは風車。 そう、クラスメイトはみんな勉強していたのだ。   「ちょ……いくらここが県内トップだからって、朝から勉強するのはおかしくない!?」  「あの……」   よく見ると、勉強している生徒は全員ではないようで、中には教室の隅でコソコソ話す女子をはじめ、勉強している生徒に紛れて絵などを描いている男子までいる。 今話しかけてきたのはその勉強していない組の中の一人らしい。   「あなた名前は?」   「綾ちゃんそんないきなり……」   綾女は人見知りをしないタイプである。   「私は、桐島 愛弓といいます」   名前は桐島 愛弓(きりしま あゆみ)というらしい。   「愛弓でいいかしら?私は上野綾女。綾女でいいわよ」   「僕は風見風車」   「こいつはかざぐるまね」   「えぇっ!?」   またもやかざぐるまというあだ名にされてしまった。  「愛弓で結構ですよ。綾女さんにかざぐるまさんですね。分かりました」   「いや、さん付けはしなくていいけどさ……」   こうして一人、友達を見つけた二人であった。
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