705人が本棚に入れています
本棚に追加
すると、一人の生徒が話しかけてきた。
「座れよ、先生来てっぞ?」
無愛想ながら親切なやつ。
「あなたは?」
「いずれ嫌でも知ることになる」
だが、三人にはよく分からない。
「クラスメイトだからって意味でしょうか?」
「ま、座ろっか?」
こうして三人は席に着いた。
たが風車だけ、何か違和感を感じた。
「よし、SHRを始めるぞ!」
そして時間が過ぎていき、放課後。
「勉強難しいね」
通学路、綾女と風車は二人で下校している。
「そうね……ねぇかざぐるま?」
「なに?」
ここから話は急展開する。
「アンタさ……風見一族の風操術はホントにもう使わないの?」
「え、あ……うん」
風車の悩み、それは自分に人にはない力があるということ。
遡ること約五年……
風車はまだ小学五年生になったばかりだった。
入学式後、父親に呼ばれた風車。
父親が言った「お前に我が一族の全てを託そう」という言葉が、風車の人生を大きく変えた。
その言葉を放った後、風車を縄で縛り、力を与える儀式を開始した父親。
その儀式は、辛く苦しいものだった。
縄で縛られ、何かが体の中に入り込み、しかしそれを拒絶する自はかなり酷なことである。
しかし、風車の父親が一族の全てを託すと言ったのには理由がある。
何故か、その理由は簡単。
ちょうど同じ時期、風見一族の親がみんな殺されたという事件があった。
子供を生かしておいた理由も簡単である。
風見一族が力を貰えるのは、正式には成人式の日となっているからである。
自らの死を察知した父親が、命を狙われることのない子供の風車に一族の全てを託したのだろう。
だが、風車はその力を手に入れてから今まで、かなり辛い思いをした。
「もう、あんな思いをしたくないからさ……」
「……まぁ、一般人からみたら、あんたはバケモノみたいな存在だったからね」
風車はそれ以来、風操術をコントロールするのに手間取り、たまに力が暴発する時があった。
その度にバケモノ扱いされ、勉強することが心の救いになったらしい。
そのおかげで晴雲学園に入れたのだが。
「あの頃は、綾ちゃんにも救われたね……」
綾女は、風車がバケモノ扱いされているときに、いつも救ってくれたのだ。
「ま、まーね……感謝しなさいよ?」
「ありがとう綾ちゃん」
だが、こんな平和な日常がいつまでも続くことはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!