第一章‐学園の違和感

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今日は何故かいきなり学校が休みになった。   「何でだろう? でもホント、変な学校だよね……」   「知らないわよ……っていうかさ、何で休みの日までアンタと一緒にいなきゃなんないのよ!」   綾女と風車は今、上野家の二階にある綾女の部屋にいる。   「リビングの置き手紙みてないの?」   「は!?」   慌ててリビングまで駆け下りる綾女。   「あった!」   そこにはこう書かれていた。   [綾女へ。今日は私もパパも家に帰らないから、風車くんと仲良く暮らしてね♪ママより]   風車には家族がいない。すなわち一人暮らしだ。 つまり今回のことは、風車にとっちゃかなり嬉しいことだろうな。   「帰らないって、嘘……私達もう高校生よ? 高校生の男女が二人きりで一日を過ごすなんて……」   「どしたの?」   綾女の帰りが遅いので、しびれをきらしてリビングに下りてきたらしい。   「何でもないわよっ!」   「綾ちゃんキレてる?」   「キレてないっすよ。じゃない! キレてるわよ!」   渾身のパクりネタだった。   「とにかく、アンタもこれ読んだでしょ? そーゆーことだから、一応気を付けなさいよ!?」   「大丈夫だよ、誰も綾ちゃんなんか襲わないから」   ビンタの音が響いた。 かなりでかい。  「痛い……何でビンタするの!?」   「アンタねぇ……これでも中学校では告白されまくりのモテモテだったのよ!? ちょっとぐらい……」   「ちょっとぐらい……なに?」 風車はこういう人間……つまり、にぶちんである。 もちろん再びビンタを食らう。   「痛いよ! なにするのさ!?」   「黙れ黙れ黙れ! とにかく、私は買い物行ってくるからね!」   そう言って、家を出た綾女。   「綾ちゃんの家に、僕一人……か」     「全く、あいつも高校生なのに何で女に興味ないのかしら……まさか、ボーイズラヴ!?」   綾女の妄想はすぐに止まった。   「ま、それはないとしても……誰かあいつが好きになりそうな娘はいないもんかねぇ」   自分がその誰かになるつもりはない。   「ま、いっか! 早く買い物して帰ろっと……」     「これが綾ちゃんが使ってるタンスか……」   思春期にはよく見られる(?)行動だ。   「……ダメだ、殺される」   風車はなんとか自重した。   「戻ろう」   部屋に戻っていった風車。 部屋にはさらに自分を誘惑するものがたっぷりと置かれているとも知らずに。
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