第一章‐学園の違和感

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「うーん」   風車は一人唸っていた。   「やっぱりマズイよね」   手には綾女の縦笛……   「落ち着け僕……よし、寝る!」   自分が誘惑に負けないように、寝ることを選んだ。 だが……   「これ、綾ちゃんの布団……」   そう分かった瞬間。   「……」   突然布団の匂いを嗅ぐ。 連載させない気が満々な風車の行動だが、仕方ない。   「綾ちゃんの匂いだ……」   思春期だから、仕方ないのである。   「かざぐるまー、帰ったわよー!」   「うわわわっ!?」   風車は慌てて布団から出て玄関まで下りる。   「き、今日の夕飯は何?」   「なに焦ってんのよ」   そして綾女は少し考えて、閃く。   「はは~ん、アンタ私の部屋に一人でいたから興奮したんだー? 可愛いとこあんじゃん」   「ち、違うよ!」   からかわれて耳まで真っ赤にしてしまっている。   「アハハ! ま、かざぐるまイジメは終わりにして」   「かざぐるまイジメ!?」   顔を真っ赤にして半泣きの風車は、さらに泣きそうになる。   「今日の夕飯は、アンタの好きなミート──」   「やった!」   風車はミートスパゲティが大好きだ。   「──ケーキよ」   「ケーキ!? ミートケーキですか!? はいはい! 先生、質問があります!」   「なにかな、かざぐるま君」   二人がよくやる[先生と生徒ごっこ~Q&A編~]が始まった。   「何故、ミートスパゲティではなく、ミートケーキなんですか? 聞いたことがありません! 」   「かざぐるま君、まずは先入観や固定観念といったものを棄てよう。そんなものがあるとすぐ近くにある新発見を見逃してしまうんだよ。分かるかい?」   風車は何故か納得してしまう。   「そこでだ、君にミートケーキなるものを試食してもらいたいんだが……」   「嫌だよ綾ちゃん! それは試食という名の毒味だよ!?」   なんで夕飯がケーキなんだ、とはつっこまない。   「チッ」   「舌打ち!?」   「冗談よ、冗談。夕飯はミートスパゲティだから、楽しみにしてなさい!」   「綾ちゃんが言うと冗談に聞こえないよ……」   風車のその台詞も聞かず、キッチンに小走りで向かう綾女。   「……綾ちゃんって、料理出来たっけ?」   風車はそんな不安を抱きつつ、部屋で待つことにした。
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