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「何だったんだ、結局?」
俺は一人、首を傾げた。
んぅ……『わらわの歌を、聞いておけ』って……どうしろと?
つか、それだけ言い残して空気に溶けるみたいに消えるとか……やっべ、アレ、マジで神様っぽい。
だいぶ無礼働いちゃったが、天罰とかないだろうか。
ドカアァァン!
その爆音は、俺への天罰が下った音……なわけなくて、花火だ。
蛹祭り、その締めとなる、打ち上げ花火。
その音を聞いて、俺は思わず、苦笑した。
「いやはや……さすがは神様っつーかなんつーか」
スケールがでかい。
んで、スケールの割に、度胸は小さいみたいで。
つまりまあ、どういうことかと言えば。
ドカアァァン!
その、花火の音に隠れるようにして。
『♪~~♪~~』
小さく、歌声が夜空に響くワケで。
その神々しさを前に、俺は思うのだ。
この歌は、きっとあの胃大なる紙、もとい、神様の義務みたいなもんなんだろう。
他の人には聞こえないはずだが、この歌のおかげでこの地に加護がある。
それを確信させる、神聖な歌声。
……けどまあ、そんな事はどうだって良くて。
あの神様……もとい小学生は、俺に言ったわけだ。
『わらわの歌を、聞いておけ』って。
それって、つまりさ――
「ど、どうかのぅ……その、う、上手く、歌えておったかのぅ……?」
自分の歌を聞いてほしいっていう、可愛らしい心意気なわけで……
それを正確に汲み取って、俺は言った。
「いやド下手」
「おぬし最悪じゃあ!」
痛い。蹴られた。脛を。
「おぬしのように愚かな奴には、罰を下さねばならんなあ?」
いや既に下ったんだが。脛に。
俺の葛藤を無視して、神様……ではなく、小学生な少女は、告げたのだ。
恥ずかしそうに。
それは花火の散る夜に。
「時々で良いから……わらわに会いにこい、愚か者」
~Fin~
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