忘れもの

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 私はふと昔のことを思い出していた。  あれはそう、幼稚園児の時だった。  お絵かきの時間にお父さんの似顔絵を描こうというのがあった。  みんな楽しそうに手を動かしている中、1人の女の子だけうつむいていた。  そう、私。 「由季ちゃんどうして描かないの?」 「だってお父さんの顔分からないもん」 「えー、お父さんの顔分からないのー」 「あはははは、へんなの」 教室の子供たちが騒ぎたてる。 「はいはい、みんな静かにしてね。由季ちゃんお母さんの顔だったら分かるかな?」  女の子なこくりとうなずいた。
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