最後のおつかい

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    私の余命はもうほとんどない ただ死を待つだけの入院生活 私は病院を抜け出した 体がふらつく、もう年だ。90過ぎて元気でありたいなど今更私は望まない 最後に会いたい人がいる 死ぬ前にただ、会いたい 花屋へ行きユリの花を買った。婆さんが昔好きだと言っていた花だ コンビニへ行き、ビールを買った。よく婆さんと2人で飲んだのがビールだった 病院を抜け出てから1時間経った、もともと余命1ヶ月程度で、延命治療されていない私の体はかなりガタが来ているようだ 久しぶりに歩いたが、真っ直ぐに歩くことがこんなに辛いものだったかと思う 息切れしながらやっと着いた 婆さんの墓だ 私はビールを開けて墓にかけて、花を添えた めまいがして、もう墓の字もいまいち見えない もう私は歩くことも出来ない 神様のお導きか、ギリギリとはいえ、ここに再び着けるなんて 私は墓の前で倒れた 婆さんが死んだのはたしか5年前だ。なんてことはない、婆さんは老衰で死んだ。ただの寿命だ 死ぬ間際にまた婆さんに会えた事を嬉しく思えるよ もし、天国というものが本当にあるのならば、天国でまた婆さんに会いたい もし、生まれ変わるということがあるのならば、また婆さんに会いたい もし、神様がいるのならば、それを叶えて欲しい また会えることを夢見て、私は婆さんと一緒に眠りについた
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