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今日はクリスマス。
イエス・キリストの誕生日。
街はキラキラとイルミネーションがほどこされ、浮かれたカップルで溢れかえっていた。
そんな中を一人で歩いているやつなんて、俺ぐらいだろう。
今日もいつも通りの残業で、俺はそんな浮かれた町を早足で通り過ぎようと思った。
ふと、ある一件の店の前で立ち止まった。
その店は、去年のクリスマスに訪れるはずだったレストランだった。
俺は、淡いオレンジ色の店内をそっと覗き込んだ。
店内も、カップルで溢れかえっていて、みんな幸せそうな笑顔だ。
俺は、自傷的に笑うと、再び歩き始めた。
「……別れてちょうだい」
頭の片隅に、自動再生された、彼女のヒステリックな声が響く。
……いや、元、彼女か。
俺は、去年のクリスマスに振られた。
理由は簡単。
彼女の浮気だった。
いや、あの場合浮気ですらなかった。
……だって俺は、二股の相手だったのだから。
悲しくは、なかった。
ただ、虚しかった。
駅のホームも、幸せそうなカップルで溢れかえっていた。
俺は、くたびれた体を無理やり電車の中へと滑りこませる。
……ぁあ。今日も終わりか。
俺は、そっと目を閉じた。耳に入ってくるのは、カップル達の甘い囁き。
俺は、体が揺れるのを感じながら、小さな決意をした。
明日も頑張ろう。
明後日も頑張ろう。
一週間後も、1ヶ月後も、半年後だって。
それで、来年のクリスマスには、あの店に行こう。
……俺も、浮かれたカップルとして。
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