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「娘さんの、遺骨はこれで無事に埋葬されました」
声が、聞こえる。
それは、やけに遠く聞こえる。
「どうも…ありがとうございました…」
今にも泣きだしそうな、悲しい声だった。
俺は、目に映っている現実がまだ信じられなかった。
隣には、悲しい顔をした若い夫婦と、黒い着物に袈裟をまとった僧侶が立っている。
そして今、俺の目に映る、真新しい小さな墓‥。
――ココニ、イル…
夫婦と僧侶の話と、その墓に彫られた字を見て、俺はやっと確信した。
目の前の現実は、全て真実なのだ、と。
手の中の小瓶を痛いほど握りしめる。
ガラス製の、本当に小さな小瓶。
中には、彼女のほんの『欠片』が入っている。
――ソウ、彼女ガ
――コノ間マデ、笑ッテイタ彼女ガ
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