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俺は右手に林檎を持って、美羽の病室の前にいた。あれからなかなか行く気にならなかったのだが、雅から昨日電話がきた。
【日向くん、ぱったり来てくれなくなっただろう?】
【ああ、はい……】
【美羽が最近、寂しそうなんだ。】
――――今日も長谷川さん来ませんね。
【時々こう言うんだ。来てくれないか?そこまで忙しいならあれだけど……】
本当にそんなこと美羽が言ってるんだろうか。深呼吸をして、扉をノックした。最初にあったら何て言われるだろう。
『長谷川さん?』
『えっ』
扉も開けていないのに、急にそう言われて思わず声を出した。どうして分かったんだ?
『どうぞ』
『失礼します……』
扉を開けると、いつもと変わらない美羽がいた。変な距離感を感じつつ、近付いた。
『久しぶり』
そう言うと美羽は、
『お久し振りです。もう……生きてる間は来てくれないかと思いました』
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