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一人の患者さんが、入院してきました。
よくよく話を聞くと、どうも昔は当院で総婦長をしてらしたとか。
業務に厳しくて、面倒見の良い上司だったとの事。当然古くから在籍するスタッフは顔見知りもおり、思いがけない再会に複雑な表情でした。
当フロアの患者層は主に「快復の見込みが無い」「認知症」「経過が長期」…大まかに分ければ、この様になっているのですが。
その方「Aさん」も例に漏れず長期療養の対象でした。
容態は緩やかに緩やかに、最期へと向かって行き…遂には「今夜辺りが山でしょう」と医師から説明がなされるまでとなりました。
奇しくも私が夜勤業務の夜です。その夜は私も含め勤務者全員が若手揃いでした。
意識の無いAさんの近くで「今夜は若手ばかりですから、御指導御鞭撻、宜しくお願いしますね」と冗談めかして言いました。
夜中三時。病棟内を巡視して歩く時間でした。
部屋を見回りながらふと廊下の向こうを見ると、もう一人看護師が巡視をしているらしくピンクのエプロンにキャップ、ワンピースの白衣である部屋に入って行くのが見えました。
作業をしながら四人分担での巡視でしたので、スタッフの誰かだろう…と自分の仕事に戻りました。
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