第1走 もはや

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宮木「うーん💧」 午前8時。通勤ラッシュの時間帯である。大都会東京のド真ん中。それも真夏である。 そんな中、汗だくで片手地図、片手にバイクを押し歩きながら歩道を歩く男がいた。 決してエンジントラブルやパンクではない。 ガス欠である。 しかも迷子である。 宮木「やべぇ…。」 視界が霞む。 宮木「ポカリ欲しい…。」 仏様にほんの少しズレた要求をするも、そうそう都合よく天からポカリが降ってくる訳ではない。 宮木「畜生。もう駄目だ…。」 その場で行き倒れ。しかも倒れた拍子に支えてたバイクが宮木の上に倒れてきた。 宮木「ぐふッ…」 痛かろうに。 この一連の惨事を見ていた周りの通行人は救急車を呼ぶべきか迷っていた。 ちょうどその時、1台の大きなバイクが宮木の傍らに止まった。 そのバイクのサイドカウルには『隼』と書かれていた。 ?「うわ~、こんなところで死にかけライダー発見。」 そう言うとその男は隼のトップケースからおもむろに水の入ったペットボトルを取りだし、宮木の頭を持ち上げ思い切りぶっかけた。 顔の下斜め45°から。 宮木「いったぁぁぁ!鼻に水が!昔海で溺れた記憶が蘇るぅぅぅ!」 ?「お、生きてた。」 宮木「お、生きてた、ちゃうがなぁ!せめて上斜め45°からにしろぉぉ!」 ?「(水ぶっかけた事にはキレないんだ…)まあ、無事で何より。つーか何でこんなところで行き倒れたん?」 宮木「あ、いや、あのバイクスシルバーブローの採用テストがあるからここら辺って聞いたんだけど。本社。」 ?「だったら君の5キロ後ろにあるじゃん。」 宮木「え?」 顔を渡されたタオルで拭きながら後ろを向くと確かにシルバーブローの看板が遥か後ろに立っていた。 宮木「無駄足じゃねーか!しかも死にかけたし!」 さっきまで死にかけてたとは思えない位ハイテンションだ。 ?「俺、シルブロの社員だし案内しようか?」 宮木「はい?」 確かに隼のトップケースにシルバーブローのステッカーと社員証が貼ってある。 宮木「マジッスか…。」 ?「俺、シルブロ入社3年目の銀崎。ヨロ」 宮木「俺は大型2年目の宮木」 銀崎「ん?」 あら?このCBRの多数の擦り傷。年期入ってんなと思ったのに。 銀崎「ま、詳しい話は本社で。じゃあついてきて。」
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