9人が本棚に入れています
本棚に追加
なんてことだ。
台に大当りを引くために来たはずの俺がすでにドル箱にいるとは…
こんなことがあっていいのか…!
………
まあ仕方ない。
これも俺の油断の招いた災い。
諦めて次のタイミングを狙うしかない。
幸いにも俺がいるのはドル箱の最上部。
つまり、今上皿に乗っている玉が無くなればすぐにでも俺が上皿に補充されるはず。
そのときこそ勝負だ!!
しかし俺はそのときふとした違和感を感じた。
ん?
誰かに見られている…?
あわてて周りに視線を走らせると、とんでもないものが目に入った。
…店員が俺を、いやドル箱を見ながら近づいてくる。
ま、まさか!?
店員の顔には満面の笑顔…
手には新しいドル箱…
ま、まさかそんな…
ドル箱を客に渡す店員。受けとる客。
くそがあぁっ!!
連チャンしてんじゃねぇよボケがぁっ!!
店員が俺たちの入ったドル箱を持ち上げる。
このまま床に降ろす気だろう…。
終わった……
後ろに下ろされてしまえば、ここから上皿に戻れる可能性は引くなる。
このまま後ろでこの客が止めるのを待って、計数機に流され、また天レールから流れてくるしかない…
自我を与えられてわずか数分……
こうもつまらない幕切れになるとは……
完全に諦めかけた、そのとき!
思いもよらないことが起こった!!
あろうことか、その場を離れようとした店員が、自分が降ろしたはずのドル箱につまづいたのだ!!
俺にはそこからの光景がまるでスローモーションのように見えた。
引っかけられたドル箱がゆっくりと姿勢を傾ける。
傾きは徐々に大きくなり、中の玉たちが移動を始める。
すると今度は玉の重心が移動したことでさらに傾きが加速される結果になり、
傾く勢いはもはや誰にも止められず、
移動してもその先に支えるもののない玉が次々に箱の外へと飛び出し始め、
飛び出した玉は勢いを失い箱の周りに散らばり、
しかし加速する傾きは次々に玉を吐き出し、新たな玉が散らばっていた玉に当たって再び加速度を与え、
一番上にいた俺はいち早くドル箱の外に押し出されたが、
内側から溢れて押し寄せる玉の量に圧倒され、
スローモーションが溶けた次の瞬間。
俺たちは弾けるように辺り一面に広がった!
最初のコメントを投稿しよう!