ロンリーウルフ

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さあ大変だ! こぼれた玉は留まることを知らずにどこまでも容赦なく転がっていく。 周りの客は突然の出来事に苦笑いを浮かべながら事態を眺め、玉をこぼされた不幸な客は自分の玉が洪水のように流れていく様をどうすることも出来ずに見つめている。 とたんに島の中に数人の人間がなだれ込んできた! スタッフたちだ! 彼等はこのトラブルを一刻も早く収拾するため、手に磁石を持って一斉に玉を拾い出した。 俺はそんなスタッフたちから少し離れた場所で、ホールの柱に当たって停止した。 スタッフたちは素晴らしい早さで玉を集めていく。 一般の客の立場からすれば、玉をこぼされた人間は自らの玉が減ることを思い、悲しい気持ちになるだろうが実際はそうならないことを俺は知っている。 スタッフたちの連携は非常に高いレベルで完成しており、こぼれた玉を残さず拾うばかりか、初めからその辺りに落ちていた玉までも回収する。 よってこぼれた玉をすべて拾い終わる頃には初めの状態より若干増えていることのほうが多いのだ。 俺は成り行きを見つめ、騒ぎがおさまるのを待った。 ホールに散らばった玉は見る間に回収され、やがては一つも見当たらなくなった。 スタッフたちは得意気にその場を離れていく。彼等のチームワークは今の騒ぎをわずか数分で片付けたのだ。 俺は改めて彼等の能力の高さを思い知った。 さすがは俺のホールのスタッフたち! 一分の無駄もない素晴らしい技術である!
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