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顔を洗って制服に着替えた後、いつも通り1階のリビングへ向かう。
制服は、明るい茶色のブレザーと赤地に白でチェック柄のスカート。
ブレザーはどこにでもありそう、と見せかけて裏地がピンク色だ。
スカートに至ってはかなり珍しい。
二重構造になっていてプリーツが無く、アーチ状にレースが裾を飾っている。
むしろ制服に見えない。
「ごっはん~ごっはん~。おはよー母さん。」
「おはよう、読湖。もう、ママって呼びなさいっていつも言ってるでしょう?」
「はーい。」
読湖が呼びかけたのは、母の奈々美。
いわゆるパッツンの前髪で、漆黒の濡れ羽色をした艶やかな髪が、まっすぐ腰まで伸びている。
170センチ以上はある高めの身長だが、なかなかグラマーで均整のとれた体だ。
目元はややたれぎみで細く、癒しオーラ全開の優しさが、微笑んだ表情に出ている。
30代後半とは思えない顔立ちとプロポーションは、近所の男達に大人気だろう。
「あ、パパもおはよー。」
「凍湖、俺は母さんのついでなのかい!?それにお父さんと呼びなさいと言ってるじゃないか。お父さんは悲しいぞ~。」
「はーい……。」
泣いた振りをしていじけているのは、父の明人。
妙に長い黒の前髪が鬱陶しく伸び、猫背なので180センチくらいの身長が小さく見える。
顔立ちは前髪のせいでよく見えないけれど、空気というか雰囲気が、かなりの冴えなさをかもしだしている。
また、やぼったい眼鏡をしているので顔はさらに判りにくく、陰気のある格好に拍車をかけていた。
似てなさそうな親二人だが、共通して目に付くところがある。
黒く見える髪の毛が、日に透けると青く見えることだ。
かなり濃い青なのだろう。
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