1.すとれんじ

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  そして凍湖と呼ばれた読湖は、じろっと明人をにらんだ。 「だったら私の名前は、よ・み・こ!とーうーこーじゃーなーくーてっ!いい加減にちゃんと呼んでよ。」 「何を言うんだ。凍湖は生まれてきたときから凍湖に決まっている。」 全く話を聞きそうにない明人の様子に、読湖の目つきが鋭さを増す。 「母さんにじゃんけんで負けて、自分が考えた名前が使われなかったからってしつっこいわよ。これ以上言い続けるなら、パパとはもう口聞かないから。」 「そんな。僕の生きがいを奪おうと言うのかい!?頼むから許してくれよ~。」 「もうヤダ、離して!触らないでよ!!」 「お願いだから無視しないで~。」 腕にすがりつく明人を突き放そうとする読湖。 しかししつこくしがみつく明人が、ばだばたと暴れた。 「はいはい。明人さん、ご飯ついだわよ。読湖も、ね?」 言い争いになるのが判っていたのか、奈々美がご飯片手に間へ入る。 「まったくもうっ。」 読湖は怒りながらも素直に椅子へ座り、テーブルに並べられた朝ご飯をとり始めた。 ご飯と味噌汁に焼き鮭、そして味付け海苔。まさに日本の朝。 しかし読湖は味わうこともなく、よそわれたご飯をふくれっ面で一気にかき込み、10分ほどであっと言う間に食べ終えてしまった。 「んぐぐっ。ごちそうさま、行ってきまーす。」 「あらあら体に悪いわよ、慌ただしいわねぇ。忘れ物はない?気をつけていくのよ。」 「はーい。」 「読湖、学校で勉強頑張るんだぞ。」 「……。」 奈々美の声だけに応えつつ、読湖は駆けだしていった。  
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