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そして凍湖と呼ばれた読湖は、じろっと明人をにらんだ。
「だったら私の名前は、よ・み・こ!とーうーこーじゃーなーくーてっ!いい加減にちゃんと呼んでよ。」
「何を言うんだ。凍湖は生まれてきたときから凍湖に決まっている。」
全く話を聞きそうにない明人の様子に、読湖の目つきが鋭さを増す。
「母さんにじゃんけんで負けて、自分が考えた名前が使われなかったからってしつっこいわよ。これ以上言い続けるなら、パパとはもう口聞かないから。」
「そんな。僕の生きがいを奪おうと言うのかい!?頼むから許してくれよ~。」
「もうヤダ、離して!触らないでよ!!」
「お願いだから無視しないで~。」
腕にすがりつく明人を突き放そうとする読湖。
しかししつこくしがみつく明人が、ばだばたと暴れた。
「はいはい。明人さん、ご飯ついだわよ。読湖も、ね?」
言い争いになるのが判っていたのか、奈々美がご飯片手に間へ入る。
「まったくもうっ。」
読湖は怒りながらも素直に椅子へ座り、テーブルに並べられた朝ご飯をとり始めた。
ご飯と味噌汁に焼き鮭、そして味付け海苔。まさに日本の朝。
しかし読湖は味わうこともなく、よそわれたご飯をふくれっ面で一気にかき込み、10分ほどであっと言う間に食べ終えてしまった。
「んぐぐっ。ごちそうさま、行ってきまーす。」
「あらあら体に悪いわよ、慌ただしいわねぇ。忘れ物はない?気をつけていくのよ。」
「はーい。」
「読湖、学校で勉強頑張るんだぞ。」
「……。」
奈々美の声だけに応えつつ、読湖は駆けだしていった。
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