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その部屋の主を見てみると、ベッドの上でぐーすか寝ている。
布団は蹴飛ばしているし、あっちこっちに手足を伸ばして、お腹はさらけ出したまま、だらしなく口が開いている。
年頃の女の子とは思えない。
むしろ土木建築のおじさんと言った方が妥当だろう。
意外なのは部屋だけで、本人はそのまま性格通りだった。
唯一の救いは、おじさんと違っていびきをかいていないので、寝息が静かな事くらいか。
「朝だよお~今日も元気にがんばろう~。」
ちょうど7時になった瞬間、なんと言うかぽや~っとした女の子の声が響いた。
誰かの声でも吹き込んでいるのか、部屋に置いてある目覚まし時計から聞こえてくるようだ。
しかし読湖は全く反応せず、気持ちよさそうに惰眠をむさぼっている。
「あ~さ~あ~さだよ~鳥さんが鳴~いて~起きるじ~かん~。」
調子に乗ってきたのか、目覚まし時計の声は妙なフレーズをつけながら歌い始める。
ぴくっ、と読湖の目元が動いた。
「ある~日~もりのな~か~くまさんに~であ~った~。ひゃー怖い……かも?」
いきなり歌が森の熊さんに変わったかと思えば、全然怖くなさそうに歌詞に答える。
この声の女の子はいろんな意味で大丈夫なのか。
女の子は、次々と色々な歌を何フレーズか歌っては、妙な相づちを打ちつづけた。
そんなかなり楽しそうな女の子とは対照的に、読湖はぎりぎりと歯ぎしりをして、眉をしかめている。
まるで万力で頭を締められているかのようだ。
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