16人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふう~、今日も頑張ったよ。うんうん、声がばっちり出てるね。」
「どぅおこがよぉ!!」
これ以上は我慢の限界と言わんばかりに、読湖が叫んだ。
どこがよ!と言っているのだが、寝ぼけてろれつが回っていない。
「それじゃ、もう起きただろうからまた後でね~。」
起きるのを見計らったかのように時計から声が響き、プツッという音とともに静かになった。
この時計、本当に録音なのか疑問が残る。
「あー……、あぁ?」
ボーっとした視線を辺りへふらふらさせているうちに、読湖もだんだんと目が覚めて焦点が合ってきた。
「うー。確実に起きれるのはいいけど、これ絶対体に悪いわ。耳が壊れちゃう。むしろ頭かしら。」
何故読湖がイヤそうにしているのか、答えは簡単。
女の子の声が殺人的に音痴だったからだ。
的確かつ絶妙な音の外れ具合は、人の気を逆立ててやまない。
「あの子もこれさえなきゃねぇ。さて、顔洗って学校行く準備しよ。」
つぶやきながらトンッ、とベッドから降り、寝起きと歌どちらのせいか分からないが、フラフラと歩いて洗面所に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!