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「よかった、よかった」
健一は同じ言葉を何度も何度も繰り返した。
その時。ドーンという、ひときわ大きな爆発音が空気を揺るがした。それと同時に、大地が激しく左右に揺れる。
「また始まったぞ!」
健一は、宝永火口だった場所を見ながら言った。宝永火口は最初の爆発で原型をとどめておらず、宝永山は跡形も無かった。――再び、富士山は噴火した。火山弾が、火山灰が降り注ぐ。「行くぞ!」
健一はそう叫ぶと、愛子の手を強く握って車がある場所に走り出した。
首相官邸地下 危機管理センター午後5時20分
全ての電灯が落とされ、U字型のテーブルの前にあるスクリーンの光だけが、危機管理センター内を照らしていた。
その前には、災害対策本部の一員である中谷雄二(なかたにゆうじ)東都大学地震研究所所長・地球物理学博士・東都大学名誉教授が立っていた。
スクリーンには、関東地方を表した地図が映し出され、富士山からは火山灰を表した物が次々に関東に流れ込んでいた。
「え、既に我々のシミュレーション通り、一時間前に関東地方にも火山灰が到達しました。火山灰は既に、川崎で4センチ、東京23区でも2センチの降灰が観測されております。このままですと、東京大震災でかろうじて生き残った電気系統、ライフラインは後数日、もしくは数時間で分断の恐れがあります」
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