第4章 分裂

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静岡県 御殿場市 午後6時22分 武田と愛子が乗ったアルファードは、降り注ぐ火山灰の中を猛スピードで走り抜けていた。 富士山の須走口から出た時に見た、宝永火口にあった、溶岩ドームと思われる物体。あれが破裂したら、巨大な火砕流が――。 その時。富士山の方から、突然ドーンという爆発音が聞こえた。バックミラーで確認すると、黒い煙が押し寄せてきた。 火砕流だ、と武田は直感した。火砕流の速度はおよそ100キロ。今の時速は120キロだから、計算上は逃げ切れる。 「しっかり掴まってろ!」 周囲の轟音に負けないように叫びながら、武田は車のスピードを更に上げた。 しかし、すぐ後ろに迫る火砕流は、どんどんスピードを上げている。もう、120キロを越えているのではないか。 しばらく走らせると、前方にトンネルが見えた。そして、そのトンネルに入った瞬間、凄まじい熱風と衝撃波が二人を襲った。
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