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健一は、ハッと目を開けた。周りを見渡すと、暗闇に包まれている。
健一は時計のディスプレイを見た。ディスプレイは、午後5時29分を指していた。
立ち上がろうとするが、途端に頭や足に激痛が走った。
「うっ……」
思わずそう呻き声を上げると、何とか身体を起き上がらせる。隣で寝ている愛子を見、再び車内を見渡してみた。
車はひっくり返っているらしく、上下が反対になっていた。
それにしても、と健一は思う。よく、数百℃の熱を持つ火砕流に襲われて生きていたものだ、と。
健一は、ドアのぶに手を伸ばし、ドアを開けようとした。
ドアは、ガチャリという手応えはあって、意外とすんなり開いた。そうして健一は勢い良くドアを開け放ち、外に出た。
「何だこりゃあ」
外の景色を見て、思わずそう呟く。その景色は、つい数時間前とは違い、“地獄”という言葉が相応しかった。
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