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木々は全てが1つ残らず薙ぎ倒されていて、家は原型をとどめておらず、道が無くなっていた。そして、卵が腐った様な臭いが辺りに立ち込めていた。
「何なんだ、一体……」
再び、そう呟く。そして、脳裏に“絶望”という二文字が浮かんだ。
しかし、何で火砕流に襲われて生きていられたのだろうか。そう、再び思った。
火砕流の中心部の温度は、数百度にもたっする。しかし、車も多少ボディーがへこんだだけで、たいして壊れていない。
「愛子。大丈夫か?」
健一は、愛子を抱き起こしながら訊いた。
愛子は、呻き声を上げながら気付いた。ぼんやりと車内を見渡しながら、「ここは……どこ?」と訊いた。
「車の中だよ。まあ、ここが御殿場のどの辺かは分からないけどね」
と、運転席に座りながら健一は答えた。ハンドルを握り、アクセルを強く踏み込む。
車がブホッと一度大きな音を立てたので、健一は一瞬ビクリとしたが、その後は正常にエンジンが作動して車がスタートしたので、取り敢えずは安心した。
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