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暫く車を走らせると、橋にぶつかった。カーナビは、その橋が架かる川は「黄瀬川(きせがわ)」と示していた。
ここら辺も火砕流に巻き込まれたらしく、アスファルトで固められた道は見えない。その変わり、火砕流が凝固して形成される岩が延々と続いていた。
カーナビによれば、ここは「新橋(にいはし)」と呼ばれる地区らしい。しかし、民家は一軒たりとも見ることができない。
視界は殆んど前が見えない程悪かった。まさに「一寸先は闇」の状態である。また、フロントガラスには絶えず火山灰が雪のように降り積もっていて、更に視界を悪くさせた。ワイパーでいくら払っても良くはならない。
車の中はエアコンが効かないせいか、無性に蒸し暑かった。冬のあの寒さが無性に恋しくなった。
「大丈夫か?」
ハンドルを握りながら、健一は愛子に訊いた。愛子は、「うん」と頷いて見せた。
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